海外旅行をライフワークにしたい!

「退職したら、年に1回ぐらいは家族で海外旅行を楽しむような生活がしたいなぁ」

そんな未来を夢想していましたが、「『いつか』と思っているだけでは実現しない!」と、お風呂の中で気が付きました。

実現するためには、自分たち親が(比較的)若くて元気な今のうちに障がいのある娘との海外旅行に慣れておく必要があります。

娘とのはじめての海外旅行として、日本から近くて、観光しやすくて、医療も発達している国…

『そうだ 台湾、行こう』

行き先に選んだのは、岡山から直行便が出ていた台湾・高雄。

料理も美味しく衛生的、日本文化がほのかに残る街並みにも興味を惹かれました。

台湾に滞在している知人が案内してくれる、というのも背中を押してくれました。

現在15歳の長女「さ〜や」は肢体不自由で全介助。
胃ろうからの栄養や水分補給、痰の吸引など、日常的な医療的ケアも欠かせません。

国内線には何度か乗ったことがありますが、国際線だとどんな課題があるのだろう?!

2026年5月に3泊4日で台湾旅行に行く!と、スケジュールを決め、2か月前の3月から航空券の予約など準備をはじめました。

しかし、いざ取り掛かると想像以上の壁が待っていました…

出発前から大苦戦!国際線に乗れるのか?

「安全にご案内することが難しい」でキャンセルに

最初の課題は、航空会社との調整でした。

さ〜やは嚥下ができないため、痰の吸引に使う医療機器を機内持ち込む必要があります。

また、自力で座位を保てないため、座席で安定して座れる補助具も必要です。

当初、岡山空港出発の便をまず予約。

その後、航空会社と電話やメールで何度も搭乗のやり取りをしていました。

が、結局、安全な搭乗が難しいと判断され、出発約1か月前にキャンセルとなってしまいました…

万が一とはいえ、フライト中に健康状態が悪化し、飛行機が引き返すことになるリスクを回避したのではないか!?と憶測したり、かなり落胆しましたね。

それでも、初めての海外旅行を諦めることはできません!

「世界は新しい旅行者を待っている」と奮起。

次の航空会社では便を予約する前から医療的ケアの必要性や全介助であることを事前に相談しました。

搭乗の方法や医療機器の持ち込みについて細かく確認し、了承を得てから便を予約。

結果的に、地元の岡山空港発ではなく、関西国際空港から高雄へ向かう便となりました。

岡山から関西国際空港へは車で3時間ほどかかりますが、旅行1か月前の差し迫った状況だったため、やむを得ず出発地を変更。

我々を拾ってくれたピーチ航空には感謝しかありません!

その後、飛行機問題に加えて、持病のてんかんの薬を台湾へ持ち込めるのか問題が発生。

主治医や台湾の領事館に問い合わせましたが、結局、本人が服用するための薬ならばOK、ということが分かり、無事に解決しました。

海外旅行は、飛行機に乗る前から始まっている。

そんなことを実感した準備期間でした。

航空会社との調整や薬の持ち込み、保険については、別の記事で詳しく紹介します。

いよいよ台湾へ!飛行機の搭乗サポートに感謝

座席では座位保持のサポートベルトを装着

関西国際空港からピーチ航空で高雄空港へ。

さ〜やは歩けないため、車いすから機内の座席へどう移動するか、どう座位を保持するかも課題。

そこはスタッフの方々が連携し、移乗やサポートベルトの装着を手伝ってくださいました。

やはりレアケースなのか、マニュアルを見ながらでしたね。

ですが、安全に配慮しながら対応していただき、とても心強かったです。

(左:往路、右:復路)

サポートベルトは航空会社が用意してくれましたが、さ〜やには少し大きめ。

往路がブカブカだったので、復路では1サイズ小さいベルトにしたらジャストフィットでした。

座位も確保でき、無事に搭乗&フライト。

いよいよ、わが家の初めての海外旅行が始まります。

高雄の街へ!地下鉄でカラフルな美麗島駅に到着

幹線はバリアフリー、スペースも充分!

高雄空港に着くと機内で車いすに乗り換え、スタッフの方の案内で入国手続きへ。

心配していた薬の持ち込みもスルーで無事に入国できました。

入国審査では「Boy or girl?」と聞かれただけ。

以前、大阪万博に行った時に「Wife or daughter?」とジャマイカの方に聞かれましたが、同じアジア人でも男女の見分けがつかないんだな、と妙なところに関心を持ちました。

空港からは地下鉄でホテル近くの美麗島駅へ。

駅ではエレベーターを何度か乗り継ぎましたが、列車内にも車いす用のスペースがしっかり確保されており、安心して移動できました。

美麗島駅は、色鮮やかなステンドグラスのような装飾で知られています!

天井まで広がるカラフルな空間は圧巻でしたね~

初めての海外でこんな景色に出会えるとは思わず、移動の疲れも忘れ、ただ天井に見入ってしまいました。

台湾といえば夜市!六合夜市で南国フルーツを楽しむ

車道に並ぶ出店たちにアジアの熱気を感じた

台湾に来たら夜市は外せません。

ホテル近くの六合夜市へ出かけました。

夜になると車道に屋台が並び、多くの人でにぎわいます。

完全なホコ天ではないため、たまに車やバイクが通ることもあります。

周囲には注意が必要。

ですが、基本的に車道を歩くため大きな段差はなく、車いすでも移動しやすい印象でした。

さ〜やも台湾の食べ物を楽しめるよう、マンゴーやドラゴンフルーツ、グアバなどを携帯ミキサーで混ぜて胃ろうから味わいました。

大人たちは台湾の夜を楽しみながら晩酌。台湾ビール最高!

屋台の明かりと人々の熱気に包まれ、これぞアジアの夜を満喫しました~

龍虎塔!車いすでは入れないが視点を変えれば楽しめる

高雄のランドマークタワー

高雄の観光名所、龍虎塔(りゅうことう)にも行きました。

龍から入り虎から出ると、福を呼び、厄を払うといわれています。

しかし、内部には階段があり車いすでは入れませんでした。残念。

一方、龍虎塔の正面にある慈済宮(じざいぐう)にはスロープがあり、車いすのまま境内に入ることができました。

金色の装飾は見応えがありましたね。

さらに、慈済宮の中からは額縁の絵のように龍虎塔を眺められました。

目的の場所に入れなくても、視点を変えれば別の楽しみ方が見つかる。

これも旅のおもしろさ。

この日は気温が30度を超えていたため、さ〜やの体調に注意しながら、慈済宮前の露店でパッションフルーツ・スムージーを買い、身体を冷やしました。

海外旅行では、観光情報だけでなく暑さへの備えも大切だと実感しました。

ヒッポキャンプで海へ!旗津半島の夕暮れ

体幹ゼロだけど、海外でもアウトドアしたい!

今回の旅行で実現したかったのが、海外でのアウトドア体験。

普段のバギーに加え、水陸両用のアウトドア用車いす「ヒッポキャンプ」を日本から持参しました。

ホテルから地下鉄、フェリーに乗船し、旗津(チージン)半島の海水浴場へ向かいました。

バイクがたくさん乗り込んだ船で短時間の船旅。

海水浴場に着いたのは夕暮れ時のマジックアワー。

日本の砂浜の色とは違う、黒っぽい砂の向こうに南シナ海が広がり、夕日が海を染めていました。

さ〜やと一緒に海外で海を眺められたことにしみじみ感動。

今回の旅行で特に印象に残る時間でしたね。

ただ、ヒッポキャンプは「アウトドア用」とはいえ、砂浜はタイヤが埋まりやすく、波打ち際までの移動は簡単ではありませんでした。あれは筋トレです。

それでも、街中の観光とは違う景色に出会えたことは大きな収穫でした。

古都・台南へ!段差の先に出会った台湾らしい風景

段差はあるけど、日本やオランダを感じられる街並み

高雄から鉄道で台南へも足を延ばしました。

台南は歴史ある建物や寺院が多く、各国に統治されたかつての雰囲気も残る街。

一方で、歩道の段差や路面の凹凸も多く、移動が難しい場所がありました。

現地の知人に案内してもらい、なるべく段差のない、メインストリートから外れた小道を巡りました。

初見の旅行者だったらまず通らない細い道。

はぐれたら絶対迷子になるヤツです。

しかし、そこには装飾が美しい寺院や市場など、台湾の日常を感じる風景が広がっていました。

歴史的建築物の赤崁楼(チーカンロウ)や、日本統治時代に台湾で最初にエレベーターが作られた林百貨にも寄り道。

段差を避けたり、バギーを持ち上げたりする場面も多く、楽な街歩きではありませんでしたね。

気づけば2万歩歩いていました。

バリアフリーが十分でなくても、ルートや移動方法を工夫すれば出会える景色があります。

無理は禁物ですが、事前に情報を集め、現地の状況を見ながら楽しむことが大切だと感じました。

帰国直前にも発見!医療的ケア児との旅行で大切なこと

高雄空港のチェックイン後のトイレにベッドがない!

楽しかった台湾旅行も、帰国の日。

5月初旬でも台湾は暑く、さ〜やの体調が心配でしたが、大きく崩すことなく最終日を迎えられました。

ただ、帰国前には空港のトイレで困る場面も。

(高雄空港、チェックイン前のトイレ)

高雄空港はチェックイン前のトイレにはユニバーサルベッドがありましたが、バギーを預けて車いすに乗り換えた後のエリアにはベッドがありませんでした。

バギーだと背もたれをリクライニングさせてフラットにし、おしめ替えできますが、車いすだと無理。

最終的には授乳室のソファを借りて対応しました。

医療的ケアが必要な子どもとの旅行では、観光地だけでなく空港のトイレやおむつ交換場所、移動中のケアまで確認しておくことが大切ですね。

街歩き中は注意を払っていましたが、空港は大丈夫だろうとノーマークでした。

空港スタッフも「ベッドはないです」で終了。

他の提案をしてくれることはありませんでした(泣)。

また、旅行中はクーリングの保冷剤を凍らせられなかったり、外出先で水分補給に使うシリンジを忘れたりと反省点もありました。

実際に旅行したからこそ、次回に向けた改善点が見えてきました。

初めての海外旅行を終えて。ハードルの先に見えた景色

可能性をもっと広げていきたい!

わが家の初めての海外旅行は無事に終了。

飛行機に乗れるのか、医療機器や薬を持ち込めるのか、現地で移動できるのか、暑さで体調を崩さないか。

出発前から多くの不安がありました。

一つずつ確認し、予定を変更しながら準備を進めました。

実際には、旅行に同行してくれた友人や現地で案内してくれた日本人の方々、搭乗を支えてくれたスタッフの方や、台湾の街で出会った人たち、多くの方に助けられ、たくさんの景色を楽しむことができました。

台湾では自走式車いすのユーザーさんはたくさん見かけましたが、バギーなどに乗った方はほぼ見かけませんでしたね。

そのためバギーは目立つのか、多くの台湾の方に声を掛けていただき、助けてもらったり、美味しい台湾料理のお店を案内してもらったり、頑張ってねと励ましてもらいました。

「なんでこの子は大きいのにベビーカーに乗っているの?」と台湾の子どもに素直に質問され、スマホの翻訳アプリで交流してみたり。

さ~やと一緒にいるからこそ繋がった現地の方との交流、とてもかけがえがなく、台湾を好きになった理由です。

もちろん、段差や車いすで入れない場所もあり困った場面もありました。

それでも、事前に準備し、現地で工夫すれば、家族で楽しめることが沢山ある!

台湾は日本から近く、食べ物もおいしい。

わが家にとって、海外旅行の第一歩として挑戦してよかった場所です。

何より、さ〜やと海外の街を歩き、海を眺め、家族で新しい経験ができたことが一番の思い出になりました。

医療的ケアが必要な子どもとの海外旅行は、情報が少なく、準備も簡単ではありません。

ですが、「難しいかもしれない」を、一つずつ越えていく。

そしていつか、もっと遠くの自然にも、さ〜やと一緒に出かけてみたいと思っています。

医療的ケアがあっても、家族で世界を旅する。

そんな暮らしを、これから少しずつ実現していきたいと思います。