子供がまだ小さくこれからどのように発達していくか分からない状況で、判断を迫られて困るものに手術があります。
「胃ろう」もその一つだと思います。
『胃ろうは将来必要がなくなったら塞ぐことができる』、という言葉に背中を押され我が家は手術に踏み切りました。
結果的にさ~やにとって良い判断だったと思います。
私たちが感じているメリットをまとめてみました。
胃ろうのメリット
- 細い経鼻チューブからの解放
- 栄養価の高いものをあげられる
- 大人と同じものが食べられる、外食もOK
経鼻栄養から経腸栄養へ
細い管のつまり問題から解放!栄養もしっかり。
経鼻栄養の場合、ミルクや経腸栄養ドリンクを細い管を通して胃に送り込んであげると思います。
ですが、いつも『チューブがつまったらどうしよう…』
とハラハラしていました。
赤ちゃんの頃は特に管が細く、ミルクはまだしも、溶けにくい顆粒の薬がよくつまっていました。
そんな時は、シリンジで引いたり、押したりで汗だくで解消。
もしもチューブが詰まったら、取り替えなければいけません。
これも冷や汗もの。
間違ってもチューブを気管に送ってはいけません。ミルクが肺に入ったら窒息させてしまいます。
気管ではなく、ちゃんと胃にチューブが入っているか???
何度も聴診器で空気を空打ちして確認していました。これも汗だく。
食事、というよりも毎食のお薬のたびにこのハラハラを感じるのは、かなりストレスでした。
また、赤ちゃんの頃は細い経鼻チューブでも栄養が足りるかもしれませんが、送り込める量が限られているので、身体が大きくなってくるとエネルギーが足りなくなってきます。
一日中ミルクを流し込むのも時間を取られ、リハビリなど他のことができなくなります。
ストレスとメリット、将来的に塞ぐことができる、という判断で胃ろうに踏み切りました。
胃ろうにして良かったのは、やはりチューブつまり問題から解放されたこと。
胃ろうチューブは太いので、多少通りが悪くても圧力をかければ送り込めてしまいます。
また、チューブ自体を食事のたびに脱着するので、つまったら洗うか、新しいものに交換すれば問題解決です。
これは安心かつ衛生的でもあります。
また、一度に胃に送り込める量も増えるので、長時間ミルクを送り込むこともなくなりました。
食事の時間は、経鼻栄養の時は1回1~1時間半でしたが、胃ろうにしてからは30分くらいに短縮。
発育も順調で、体重も身長も成長曲線の範囲の下の方を這うくらいには大きくなっています。
そして、胃ろうにして1番メリットを感じているのは、体調不良の時でも水分補給やエネルギー補給が問答無用にできること。
日常的にも水分補給はマメにしますが、下痢や風邪の時は特に多めにあげています。
食事も、薄めた経腸栄養ドリンクを消化できる範囲であげられるので、消耗戦にも強いと思います。
胃ろうでの食事スタイル
食事のバリエーションが増える!
経鼻栄養の時はミルクや経腸栄養ドリンクのみでしたが、胃ろうになってからは健常者と同じ食事をミキサーにかけたペースト食をあげられるようになりました。
これにより食事にバリエーションができ、いろんなものを食べさせてあげることができるようになりました。
現在のメニュー
- 朝ごはん 経腸栄養ドリンク+バナナ・りんごなどをミキサー
- お昼ごはん 学校なら経腸栄養ドリンク、家なら朝ごはんと同じ
- 晩ごはん 私たちと同じものをミキサー
さ~やは1歳で胃ろうにしてから7年が経ちます。
100%胃ろうからの栄養摂取で、最初は3食ミルクで一食200mlの食事量でしたが、2歳ぐらいからは朝・昼を経腸栄養ドリンクに置き換え、同量の200mlにしました。
経腸栄養ドリンクには「リフラノン」というゲル化剤を混ぜることで、ただのドリンクにとろみがつき、胃に長く留まってくれる、ということで、長時間注入しっぱなしから、数回に分けての注入ができるようになりました。
現在の食事スタイルは、1回の注入量を50mlとして10分間隔で計4回の注入。
2歳以降1回の食事量を200mlと変えていませんし、食事の内容も変わっていませんが、不思議と順調に発育しています。
むしろ、ちょっと量が増えると太ってきます。確実に。
おそらく、自分で動けないために消費エネルギーが少なく、基礎代謝+多少の成長分、で充分なのでしょう。
なので、栄養素の中でも炭水化物は少なめにして、タンパク質は多め、脂質は適度に、野菜は多めにしています。これでお通じもOK!
また、ミキサー食の注意点としては、ごはんを水とミキサーするだけではツブツブが残ってしまいチューブを通りにくいので、でんぷん分解酵素を混ぜサラサラにすることです。
そのサラサラにするのが「スベラカーゼ」。
スベラカーゼは酵素に加え寒天などの多少固まる成分が入っているので、ごはんがプルプルのゼリー状になるので、リフラノンと同じく胃に長く留まってくれる効果を期待しています。
経腸栄養ドリンクにはリフラノン、ミキサー食にはスベラカーゼ、それぞれ使い分けています。
胃ろう×小型ミキサー
外食でも美味しいものを食べさせられる!
ミキサー食の良いところは、『同じものを食べている』と実感できることでしょう。
美味しいものを食べさせたい、と食事を作るのにも張り合いが出てきますし、一緒にご飯を食べるのが楽しくなってきます。
これは外食でも言えることです。
なので小型のミキサーを持ち歩き、その場で食事を作ってあげるのも楽しみの1つです。
焼肉やステーキ、お寿司、和食やフレンチ、イタリアン、お店で食事をミキサーに入れ、電源を借りて作ってあげることができます。
事情説明すればお店の方も快く引き受けてくれ、電源を断られた事はありません。
最近は小型で性能の良いミキサーが出ているのでとても便利です。
我が家が使っている「ビタントニオ・ミニボトル」は500mlペットボトルぐらいのサイズで持ち運びが便利ですし、ミキシング力も強力なので重宝しています。容量は280ml。
ボトル容器に食事を入れてミキサーできますし、そのままシリンジで吸って胃ろうチューブから食事をあげられます。
ミキサーの刃の部分をフタに取り替えれば、持ち運びや保存も可能です。
ミキサー音も比較的小さいので、音楽があるお店ではさほど気になりません。
経験的に、ミキサー食で注意しなければならない食材は、えのきや肉などのスジ系とリンゴなどの薄い皮系です。
スジ系は回転する刃の付け根に絡まったりするので、あらかじめ刻んで入れる方がいいですし、薄い皮系は細かく粉砕しきれないのでチューブでつまりそうになることがあるので、皮をむいてから入れる方がいいと思います。
まとめ
胃ろうにしたことで食事の管理が楽になり、時間も有効に使えるようになりました。
いろんなものが食べられるようになった分、アレルギーが見つかったりもしましたが、それよりも発育や健康、肌つやの良さなど良い効果の方が大きいと思います。
残念ながらさ〜やは一生胃ろう生活になりそうですが、たまにアイスや生クリームなどを口に入れてあげると、いつもより多めにハムハムして、舌鼓を打っているようです。
胃ろうでの食事スタイルについては地元の病院ではなく、大阪の森之宮病院(小児リハ部門は現在ボバース記念病院に移転)で教えてもらいました。
残念ながらこのあたりも、地方での福祉関係の情報の少なさが表れています。